ハチミツ×シュガー



「……彼方…
 私、話があるの…」


 彼女がまっすぐ俺を見つめて言うその言葉に、俺は発狂したくなる。



「――何?」


 俺は、静かに隣の席に腰を下ろした。

 彼女は俯いて、婚姻届をじっと見つめてる。
 俺はそんな彼女から、目が離せない。




「彼方… 正直に、答えて欲しいの。



 ――私を、好き…?」


 そう言って、ギュッと目を瞑り、一粒のダイヤが煌めく左手を握る彼女。





 ――好き?


 ……そんな事、誰に聞いてんだよ…




 一向に答えない俺に不安になったのか、恐る恐る目を開いて俺を見る。

 目があった瞬間、何かを感じ取り、涙を浮かべた。




「――好きなんかじゃ、ねぇよ」



 低い声。

 俺自身、自分の声にビックリした。



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