ハチミツ×シュガー



 『さようなら』



 ――って、どんな意味?



 テーブルに無造作に置かれたリング。

 それでもなお輝き続けるそれに、俺は無性に腹が立った。




「――っざけんなよ…っ」

ガタンッ






 誰が、逃げていいって言った?


 誰が、離れていいって言った?




 走って玄関に向かうと、すでに彼女の姿はない。

 靴を履いて急いで外に出ると、ちょうどエレベーターに彼女が乗り込む姿が見えた。


 俺は必死に走り出す。




ガコン…ッ



 エレベーターがドアを閉める刹那、俺は右手で押さえた。

 彼女は目を真っ赤にして、俺を見上げる。



「――来い…っ」




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