ハチミツ×シュガー






 愛しい、愛しい君。



 俺と過ごした日々が、君にとって優しい時間だったのと同じように……


 俺にとっても君との時間は、かけがえのない時間だった。





 ―――生まれた時から一緒。


 お互いに愛しい者が出来ても、互いが離れたくない俺達は……

 きっと、死ぬその瞬間まで、互いを愛するだろう。






「では、花嫁にベールを…」

 扉の両脇に立つ女性が静かに俺に伝えた言葉。

 その声に、思考を止めた。






 真っ白な扉の向こうから、美しい音色が聞こえる。



 少し膝を折った彼女に、ゆっくりと繊細な刺繍のレースを被せていく。


 瞼を閉じ、ジッと待つ楓の姿は。

 今まで見てきた中で、一番キレイだ。



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