ハチミツ×シュガー



 教室の前。


 クラスメイトの賑やかな声が、廊下まで聞こえてきてる。
 先生はまだ来てないらしい。



「楓……本当に保健室行かなくて大丈夫?」


 教室前で、真弓が眉を下げて心配そうに訊ねてきた。


「……うん。大丈夫」


 無理やり笑顔を作ると、震える手でドアをゆっくりと開けた。



カラカラカラ…



 シ…――ン…



 私が中に入った瞬間。

 さっきまでのざわめきが、嘘のように静かになった。





 みんなの視線に、手も足も震えてくる。


 ……すごく恐い。




 教室の中心にある群れの中。西城くんがこちらを一瞬見た。

 けれど……

 すぐに視線は前へと逸らされた。






 ――負けちゃダメ。




 傷つけてしまったかもしれない。


 だから、目指すはただ一つ。




 クラスの中心にいる、彼。





「西城、くん…」




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