ハチミツ×シュガー



「ごめ…っ」


 私は泣き顔を見られたくなくて、俯いてしまった。



「うわっ うざー!」

「彼方が優しくしてやったのにつけあがってさー」

「デブのくせに生意気なんだよ!」



 静かな教室の中、女子の声が響いた。



「――楓!

 ……あんたらいい加減にしなさいよっ」



 真弓が私を抱き締めてすごい剣幕で怒鳴ると、一瞬、女子達は黙った。



「佐藤……それよりも如月保健室に連れて行ってやって」


 「大丈夫か?」と斉藤くんが優しく微笑むと、着ていた学ランを脱いで、私の頭に掛けてくれた。



「あ、りがと…」

「気にすんな」


 ニッコリ笑いながら学ラン越しにぐしゃぐしゃと頭を撫でてくる。




 余計に泣けちゃうよ…。




「楓、行こう」


 真弓に言われて静かな教室を出て行った。



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