Only One
―――「終わったぁ~♪」
夜、7時。
やっと私は仕事を終えて、手を洗っていた。
明日は土曜日だからお休み。
『…お疲れ様、天野さん。』
「ぁ……木下さん…」
明日は休みだからと余韻を浸っている私の横に来たのは、同僚でもある木下さん。
エステティシャンでは珍しい……男性だ。
もちろん、同僚であっても苦手なものは苦手だし、嫌いだ。
あまり良くないリアクションをしているはずなのに、なぜか木下さんは私に話しかけてくる、変な人。
『…このあと暇?』
「ぇ…っ?」
『飲みにでも行かない?』
「ぁ…っご、ごめんなさい…っ!私、ちょっと……」
『あ、いいよ!俺が誘ってみただけだし、気にしないで。』
「じゃ、じゃぁ…失礼します……っ」
目も合わせず、私はその場から離れた。
「はぁ……」
ホントに苦手。
話すことさえ儘ならないのに、誘いを断ることほど苦痛なことはない。
やっぱり私、このまま一生、恋なんてできないんだろうな――…
そんなことを思いながら、私は帰る支度を済ませた。