Only One



『わぁ~、何何?何買ったの??』

『ぁっ、こら、お前は見るな!』

『え~!?何でよーー!!』


そこへ、好奇心の塊である智愛ちゃんが郁人さんの元へやってきて、紙袋の中身を覗いている。


『これは芹那ちゃんのなの。智愛は見ちゃダメです。』

『兄貴のケチー。』

「ぁ、あ~…智愛ちゃん、気になるなら、見ていいよ。」

『本当!?』

「ぅ、うん。」


なんかこのままだと兄妹ケンカになりそうな予感を察知した私は、すぐさま仲介に入った。

許可を得た智愛ちゃんはすぐにガサゴソと紙袋の中を漁り始めている。


『でも、芹那ちゃん…、』

「郁人さん、ありがとうございます。でも、見られて困るようなものでもないですし、私はそういうの気にしないので。」

『そう?』

「はい。」

『なら良いんだけど。』

「私、ご飯作ってきますね。」


いつも郁人さんは私を第一に考えてくれる。

それがすごく心に響いてくるから――…


今のこの生活が、幸せで仕方なく思えた。




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