Only One
「私は大丈夫ですから、郁人さんは…お仕事頑張ってきてください。」
『でも――…』
「家に帰ったらちゃんと、連絡します。」
『本当に?』
「はい。」
郁人さんは、すごく過保護。
私が止めなければ、今日、郁人さんは私についてくる気満々だった。
でも、それを私が必死に止めたんだ。
いくらなんでも、そこまで郁人さんに頼っちゃダメだ。
「ケーキ、楽しみにしてます。…いってらっしゃい。」
『くれぐれも、気をつけるんだよ?智愛、しっかり守らないと――分かってんな?』
『合点…!!』
『じゃ、行ってきます。』
最後まで私を心配してくれて、お仕事に行った郁人さん。
閉められた玄関に、智愛ちゃんは溜め息をついている。
『あの瞳は未だに怖いわ…。』
「・・・?」
その上、意味の分からない言葉を紡いで、智愛ちゃんはリビングに去って行ったのだった。