Only One
『無理は絶対にしないでください。芹那さんの安全が第一です。少しでもターゲットに異変があった場合には、すぐに引き返してもらいます。』
「はい…。」
2日前に初めて会って、今日の注意点を言われた時と同じことを言われる。
それほど、念押ししたいんだろう。
『それから、俺からは絶対に離れないで。店に入って、店長に話を付けるときは席をはずしますが、話が終わり次第、すぐに僕の所へ来てください。』
「はい。」
『諏訪さん、芹那をよろしくね?』
『藤咲さんこそ、的確な指令をよろしくお願いしますよ。ターゲットのちょっとした動きさえも見落とされては困る。』
『分かってるわよ。』
さすがに、いつもおどけてる智愛ちゃんも仕事モードのようで、車内に緊張が張り詰める。
私だってドキドキだ。
いつも隣にいてくれる郁人さんがいない。
それだけでも不安なのに、もしもあの人に会うかもしれないなんて、考えたら――…
『大丈夫よ、芹那。この私が絶対、芹那をアイツには会わせやしない。』
「智愛ちゃん――…」
震える手を、智愛ちゃんが力強く握ってくれた。
大丈夫。
少し、勇気をもらえた時、ちょうど車がお店についた。