Only One
『智愛、ドジとかしなかった?』
「いいえ、すっかり探偵さんの顔で。…私も随分、智愛ちゃんの言葉に励まされました。それに…店長との話をまとめてくれたの、智愛ちゃんだし。」
『え…?それ、どうゆうこと?』
郁人さんはなんだかんだ言ってもお兄さんで。
智愛ちゃんのことも、実は心配だったんだろうなぁ…って思った。
「それが…やっぱり私、お店をやめる理由を言えなくて、中々話がすすまなくて。そんな時に、智愛ちゃんが…通信機越しに、“私が言ったことを言ってほしい”って。それで、話がまとまって。」
『へぇ~…。智愛も案外頭がキレるんだな?』
「クスッ、案外って、酷いですよ。郁人さん。」
『ははっ、まぁでも、智愛も成長したってことだよね。――とにかく、無事でよかった。』
「……っ!」
郁人さんには、どうしても勝てないと思う。
だって、こんな不意打ちって、ないもの。
『俺も着いていきたかったなー…。』
「だ、ダメです…。郁人さんには仕事があります。」
『クスッ…膨れるなって、芹那ちゃん。』
郁人さんには何だってお見通し。
郁人さんだったら、何をしたって許されるんだろうなぁって思った。