Only One
『――芹那ちゃん!』
夕方。
いつもより早く、郁人さんが帰って来た。
「郁人さん…?」
『良かった…。本当に…!』
「ちょっ、郁人さんっ!?」
今日は智愛ちゃんのおかげで店長に話を付けることが出来たし、郁人さんにも心配かけたしと、今日の夕飯は頑張ろうって、作ってた真っ最中なんだけど――…、
何故か、帰って来た郁人さんに抱きしめられた。
「っ……」
ど、どうしよう…っ!?
郁人さんは、私を抱きしめたまま、何も言わずにいる。
男の人に抱きしめられたことがない私は、どうすべきなのかも分からずにアタフタ。
鼓動がいつになく騒がしく、郁人さんに聞こえるんじゃないかってくらいにドキドキしてる。
――抱きしめられた、身体が熱い。