Only One



『芹那は、何しに来たんだ?』

『あんっ』

『答えろッ!』

『ぁぁっ…てん、ちょうに…店をっ、アッ――辞めるッて…』

『チッ…もう手遅れか…。それで?』


木下も必死だった。

時間を見つけては、芹那の行きそうなところを虱(しらみ)潰しに回り、寝る暇も惜しんで、芹那を捜していた。

芹那は自分のモノ。

自分のモノは、自分の傍に置いていないと気が済まない木下は、こう狂っていた。

芹那を捕まえるためなら、手段を選ばない。

捕まえて、閉じ込めて、じわじわと芹那は自分の所有物であるのだと、わからせるという野望を胸に。


でも、中々芹那の情報は見つからなかった。

本当に芹那の居場所は誰も分からないらしく、手がかり一つもない。

芹那が消えるのと同時に、荒らされた芹那の部屋。

まさか誘拐――とは思ったが、芹那の実家に奇妙な電話は来ていない。


それに、店に来たという事は、誘拐されたわけではない。

一体、芹那は何処へ――


『あっ、と――』

『あ・・?』

『あの子、男とっ――』

『ぁあ゛…?』

『はぁんっ…男とっ、一緒にいたわ…!ぁうっ』


ナンダッテ?

芹那にオトコ?


『背が、高くて…、イケメンでっ――』


思い当たるのはただ一つ。

あの時、俺の挙を余裕の表情で交わした――あの男。





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