Only One



ユルサナイ。

何処までも、俺を馬鹿にしやがって。

アイツダケハ、ユルサナイ。


木下に湧き上がるのは、顔をそむけたくなるほどの憎悪。

殺意さえ、芽生えそうだ。


でも、どうする?

アイツの居場所なんて――…


『――くっ…』

『え・・・』

『ククククッ…あっはっはっは!』


突然、狂人のように、木下は笑いだす。

思い出した。

芹那が行きそうなところ。


ケーキが大好きな芹那。

その芹那が毎週通っていたケーキ屋――…その店員。

それこそ、俺の芹那を奪ったアイツだ。


芹那――…

もうすぐ、迎えに行くよ――?


木下は、右の口角だけ上げて、笑っていた。





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