Only One
影ゆく現実
――2週間後。
『…――天野さん、今上がり?』
新しい職場にも慣れてきた今日この頃。
この店で働いているスタッフさんは皆優しい方で、私がこの輪に溶け込んでいくのに時間はかからなかった。
「はい、先ほどお客様が帰られまして――」
『芹那さん、お待たせしました。』
「あっ、音海さん。」
ここのスタッフである井上さんと話していると、後ろから着替えを終えた音海さんがやってきた。
『本当、仲がいいわね、お二人さんは。』
「いえっ、そんな…っ!」
いつも私と音海さんは一緒に行動している。
出勤も、仕事中も、帰宅までも。
それは音海さんが私を一生懸命守ってくれているからなんだけど、傍から見れば、双子の様に仲がいい友達って感じだ。
私は別にそう思われても気にしない方だけど、音海さんは分からないから、こんな話をされると、どうすればいいのか分からないから困ってしまうので苦手だ。