Only One
「で、では井上さん、お疲れさまでした。」
『お疲れさまでした、お先に失礼します。』
『お疲れさん~♪気をつけてね、2人とも~』
井上さんに見送られ、店を出た私たち。
「――もう、この仕事には慣れましたか?」
音海さんと肩を並べて歩きながら、私は口を開いた。
音海さんはさすが、というか、とてものみ込みが早かった。
そりゃ最初は右も左もわからない感じだったけど、一からちゃんと教えれば、すいすいとこなすすごい人。
この頃じゃ、私の助手なんかもったいない、と思うほどに、音海さんはエステティシャンとして成長していた。
『ぇえ、まぁ…。それもこれも、芹那さんが私に分かりやすく仕事を教えてくれたおかげです。』
「そ、そんな…っ!音海さんの努力の結果ですよ!」
ここ2週間、音海さんと接していて、私の音海さんへの第一印象は劇的に変わった。
最初は冷徹でミッションしか興味なさそうだな、と冷たいイメージを持っていたけど、
実際の音海さんはそれとは正反対、というか…
言葉にすれば、好奇心旺盛で、意欲家で、その上努力家…そして、気が利いて、優しくて…冷たい人なんてとんでもない、ちゃんとした、心を持った良い人だった。