Only One
『――私、5年前に勤めていた会社が倒産したんです。』
「え…?」
『5年前までは、普通にOLをやっていました。だけど、会社が突然、倒産して…すぐに職を求めてハローワークに行きました。』
音海さんがOL…。
あまり想像しがたいのは、音海さんがガッツのある人だと分かっているからだろうか。
『当然、不景気な世の中なので…あまり期待は出来ないと、言われました。この先の不安を抱えていた帰り道で…ある張り紙が目に映ったんです。』
「――…」
『電柱に、一枚だけ、貼ってあったそれが、今の探偵社の人員募集の紙でした。探偵なんて、安定できない職業だって、収入も期待できないって、分かってましたけど…このまま職の無い状況を続けるよりかはマシだと思いました。すぐに面接に行って、そして…今に至ります。』
意外な音海さんの探偵への道。
『最初から、危ない仕事を任されました。命をかけた仕事を目の前に、半端な心じゃ続けられないことを、身をもって痛感しました。だから…ジムに通って、自分を鍛えて――依頼人一人くらい守れるくらいにはなりたいと思ったから…――』
だから、今もここにいる。
探偵として、私を守ってくれてる。
「…すごいですね、音海さんは。」
『そ、そんなことは…っ!』
「いいえ、すごいです。尊敬しちゃいます、本当に。」
少し照れ気味の音海さんを横に、私ももっと頑張らなくちゃと思った。