Only One



――その夜。


『遅いなぁー。』

「…あれ。郁人さんはまだ帰ってないの?」

『うん、そのなのよ…。』


もう9時だ。

ご飯作って待ってたけど、いまだ郁人さんは仕事から帰ってこない。

だから先に、お風呂も済ませたんだけど…


「どうしたんだろう…。」


いつも仕事で遅くなってしまう時には、必ず電話の一本はくれるのに…。

なんだかとても心配になる。


『まぁ、兄貴も子供じゃないんだし、そのうち帰ってくるでしょ!ねっ』

「――…。」


そう、かもしれないけど、でも――

嫌な予感が、私を襲う。

まさか、まさか――…

最悪なビジョンが頭をよぎった時…――


ガチャ――っ



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