Only One
――『さぁ、芹那。もう時間だ。』
「―――…っ」
生温い手つきに起こされる。
目を開ければ、すべてが終わる気がした。
けれど――
『起きないならしょうがない。勝手に始めるか。』
「っ…やぁっ!」
『ククッ…はい、起きたー♪』
まんまと木下の罠にかかり、目を開いてしまった。
見たくなくても映ってしまう、木下の背後にあるもの。
『これから、入れるんだ。刺青を。』
「っ」
『大丈夫。これからは――ずっと一緒だ。』
“ずっと一緒”
その言葉が、妙に頭に響いてきた。
『俺が彫った刺青を、ちゃんと芹那にも見てもらいたいからさ。右の甲に彫るから。』
「やっ…やめて…ッ」
『やめるわけないじゃん。やっと、俺と芹那が繋がるんだ。』
「ッ――」
笑顔で手に持った刺青用具を見て、今すぐに時が止まればいいのにと、本気で思った。