Only One



――『着きました。』

「・・・ここに、芹那ちゃんが――」

「ボーっとしてると、おいてくよ、兄貴。」


目の前の、いかにも古くて、誰もいそうにない廃ビル。

のんきにそれを見上げてる俺とは対照的に、智愛と星川さんはしかめ面で中に入っていく。


「…地下に、いるのよね。」

『はい。』

「芹那…。」


さっきからずっと、智愛は芹那ちゃんの名を呼んでいる。

智愛にとって、芹那ちゃんはきっと一番の友達なのだろう。

母と父が地位と名誉も持っていたため、俺と智愛の周りには、下心しか持たないやつらばかりが集まって来た。

だから、智愛には友達と呼べる友達もいなかったのだ。

友達もどきなら、たくさんいたけれど。

…そんな中、智愛を外見だけで判断せずに、中身を見つめて、友達だという仔が現れた。

それが、芹那ちゃんなんだ。

だからこそ、智愛は失いたくないんだろう。

唯一の、友達を。


『いやぁあーーーーっ』

「「っっ」」


ビルに入って、地下に繋がる階段を下りていると、大きな悲鳴が響き渡り、俺たちは足早に地下へと進んでいった。



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