Only One



――「どうして…っ」


今は下書きの段階で、カラーで私の右の手の甲に蝶の絵が描かれていく。

暴れたらまた電流のお仕置きだと言われた私は、抵抗できずに疑問だけ口から滑らせていた。


「どうしてこんなことっ」

『蝶の絵柄はさ、カノンが一番好きだった柄なんだ。そして、カノンに一番似合ってた。だから――前もこうやって、俺が刺青を入れてあげたんだよ。あの時は――ココ、だったな。』


そう言いながら、木下は私の右横の腰を指差した。


「私はカノンさんじゃな――」

『分かってるよ!』

「っ――」

『分かってても、カノンに似てる君をカノンに重ねずにはいられない。俺にはカノンが必要なんだ。カノンがいればそれでいい。なのに…なのに…』


その直後、下書きをしていた木下の手が止まった。


『これを彫ったら…君はカノンになるんだ。』

「っ!」

『そして、これからずっと一緒に俺と・・・。』


そう言って、木下が手にしたのは――


「いやぁあーーーーっ」

『二人で幸せになろう、カノン。今度こそ、絶対に。』


刺青を彫る針だった。



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