Only One
『てめぇ…っ!よくも芹那ちゃんをこんな目に…ッ』
あれ…幻かな?
ここに、郁人さんがいる。
ここに連れてこられて、ずっと恋焦がれてた郁人さんがそこに――
『っ、うるさい!カノンは俺のものだ!俺のモノを取り戻して何が悪い!?』
『カノン…?はっ、何言ってやがる。芹那ちゃんは芹那ちゃんだ。カノンじゃない。』
『黙れ!黙れ黙れ黙れ…!お前に何が分かる!お前ごときに、俺の何が…!』
木下は持っていた針を床に投げつけ、郁人さんに襲い掛かる。
「やめっ」
『――分かんないね。』
『……っ』
郁人さんの一言に、木下は一瞬怯む。
『死んだ恋人を忘れられないのは分かるが、だからって、外見が似てるだけの芹那ちゃんに死んだ恋人を重ねることしか出来ないアンタの気持ちなんか、分かりたくもねぇ。』
『くっっ――黙れーーっ』
「やめてぇ――っ!!」
ガッシャーンッ
『ぐっ・・・』
郁人さんに手を上げた木下に、私はとっさに横に並べてあった刺青用具をすべて木下に投げつけた。
ジュッ――
『ぐぁあああっ』
その中で、私に入れようとしていた針が木下の首に刺さり、木下はとてつもない悲鳴を上げて、気を失ったのだった。