Only One
『芹那、どうして――』
「あの、」
『っ!』
その女性は俺の存在を見ていなかったのか、俺が話しかけると肩をびくつかせた。
『あなたは…?』
「僕、藤咲 郁人と申します。芹那ちゃんのお母様…ですよね?」
『・・・ぇえ――』
いきなり現れた俺に、不審な目を向ける芹那ちゃんのお母様に、これまでのいきさつを話し始めた。
『―――そうだったの。そんなことが…』
「すみません。僕が気を抜いたばっかりに――」
『そんな、藤咲さんは何も…。逆に、娘を守ってくれて、ありがとうございました。』
「――っ」
事の真相を話し終えて、自己嫌悪に陥る俺に、逆に頭を下げる芹那ちゃんのお母様。
その笑った顔が芹那ちゃんに似ていて、俺はとても驚いた。