Only One
『――あの子ね、高校生の時に、同級生に…初恋をしたのよ。』
「……」
“初恋”
この言葉に、少し心が痛む自分がいた。
『あの子いつも言ってたわ。私なんかに優しくしてくれるって、クラスで人気者で、面白いんだよって、そりゃもう楽しそうに。でも――いつの日か芹那は…その子の事を一切口に出さなくなったのよ。』
「え…。」
『振られたんですって。でも、恋が実ることはそう簡単にいかない事くらい、芹那は分かっていたはずなのに、そりゃもう酷い落ち込みようで…あまりにも引きずってるものだから、問いただしたのよ。振られたときに、何て言われたのか。そうしたら…泣きながら教えてくれたわ。』
いきなり言葉をきるお母様。
前よりも顔が強張っているのが見て取れた。
『“お前なんかのブス、俺が相手にするかよ。お前に話しかけたのも、王様ゲームで負けたから。勘違いしてしゃしゃってくんじゃねぇよ、ブスが。”――そう、言われたらしいわ。』
「そんな、酷過ぎることを――」
初めて会った時、あんなに拒否られたのも、
二度目に会ったときに、あんなに震えていたのも、
三度目に会ったときに、あんなに怯えていたのも全部、
このトラウマがあったから――。
すべての事が繋がって、何も悪くない芹那ちゃんを傷つけた相手が無性に憎くなった。