Only One



―――芹那ちゃんが病院に運ばれてから3日後。


仕事帰りに芹那ちゃんのところに行くのが日課になりつつある今日この頃。


ガラッ…

「芹那ちゃん――」


ピッ、ピッ、ピッ……――


未だ、芹那ちゃんは目覚めない。


「芹那ちゃん、早く起きないとダメじゃん。俺と違って、目覚めがいいんじゃなかったの?」


いつの日か、芹那ちゃんが目覚めの悪い俺に言った事を、今度は俺が言う。


「早く起きてさ…また、俺と智愛にご飯作ってよ。智愛の料理が食べられるもんじゃないってことは、芹那ちゃんも知ってるだろ?」


毎日毎日、眠ったままの芹那ちゃんの手を握りしめながら、返事もないのに話しかけ続けた。


「早く、…起きてくれよ――」


お願いだから。

早く目を覚ましてくれ。

早く…あの柔らかい笑顔で、『郁人さん』って呼んで――


そんな思いを込めて、芹那ちゃんの手を握りしめる右手に、力を込めた時――…




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