Only One
や――…っ!!
触ら、ないでっ……!
「ぉ、でん…。」
『おでんがいいの?芹那。』
「っ…!」
コクコクッと首を振る私に、微笑した木下さんは、やっと私から手を離した。
『じゃ、俺もそうしようかな。…すいませーん!』
『…はい!』
『おでん2つ。』
『はい!』
こんな状況が、まだ続くのかと思っただけで、身体が震える。
岡野さんに助けを呼ぼうかな、
そう思い、携帯を取り出した時――…、
『何してんの?』
「ッ…!」
木下さんの射るような鋭い声が、私に突き刺さった。
『はぁ…せっかくの2人っきりの夕飯中に、誰と連絡取るつもり?芹那。』
「っ…!」
まるで、彼氏が彼女を叱るような言葉。
『携帯、出して。俺によこせ。』
「ッ…!」
『早く。』
命令のように手を差し出され、私は震える手で携帯を差し出した…――。