Only One
『クスッ…身の程知らずもいい加減にしろよ?女のクセに――っ』
「やっ…!!」
パシッ
「…っ?」
私に振り上げられた拳。
殴られるって、思ったのに…―――
『誰だっ、お前――…!?』
『身の程知らずは君の方だ。彼女、震えてるじゃないか。』
「っ……ぁ、」
殴られることもなく、目の前にいたのは……私が通うケーキ屋の、厨房のお兄さん――…いくと、さんだった――…。
庇った…私を?……この人が――…。
『女性を殴るなんて、卑怯だ。――大丈夫?芹那ちゃん。』
「っ…!?」
『おまっ…!芹那、どうゆうことだ!?』
『行こう、芹那ちゃん、』
「あ……っ」
名前を呼ばれて、手を優しく掴まれた。
私を引っ張ってくれるいくとさんの手は、…――温かかった…。
『…っ、俺の、芹那なのに…ッ』
残された木下さんが、呟いた。
『芹那…お前は俺のモノだと、分からせてあげるよ…。』