Only One




――『…はぁ、ここまでくれば大丈夫か…。』

「っ……」

『ごめん、走らせちゃって…でも走った方が良い気がして……』

「ぃえ……っ」


それから、近くの公園まで走った。

久しぶりの運動に、息が上がる私。

自転車……置いて来ちゃったな…。


『何か…変なことされてない?』

「ぇ…ッ?」


驚いて顔を上げると、心配そうないくとさんの瞳とぶつかった。


『最初は…、2人を見て、彼氏か何かかなと思ってたんだけど……、芹那ちゃん震えてるし…、あの男の様子もおかしかったし…。案の定、男が芹那ちゃんに殴りかかろうとしたからとっさに庇っちゃったけど、』

「ぃ、え……ぁりがとうございます…っ」


心配、してくれてる…?私を?

こんな男の人――…初めて…。




< 32 / 212 >

この作品をシェア

pagetop