Only One



『良かった。じゃぁ…俺は、これで。』

「ぁ…ッ」

『っ、…ん?』


とっさに掴んでしまったいくとさんの服の袖。

ゃだ、私何して…っ


「ごっ、ごめんなさいっ…!」


我に返って、パッと、いくとさんの服を掴んでいた手を離した。


『……不安?』

「…ぇ、」

『男の人が苦手って、言ってたじゃん。』

「っ……」


そうだよ。

男の人は苦手で、怖くて、むしろ嫌いで…関わりたくないのに、


ならどうして、

私はいくとさんの服を掴んだ――…?


『まぁ、確かに、異性を怖がる気持ちもわかるよ。』

「ぇ…ッ??」


ぃ…ま、この人……なんて言った?

見上げた先には、哀しそうにほほ笑む、いくとさんがいた。




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