Only One
『俺ね、自慢じゃないけど、こんな容姿じゃん?女の子達からの注目もよく浴びるわけ。でも、容姿が良すぎると……中身を見てもらえないんだ。』
「っ……」
私はブスって言われて、中身を見てもらえなかった。
でも、素晴らしい外見を持ってるいくとさんも…
…――中身を見てもらえなかった一人だったんだ。
『好きだった女の子にもね、俺のどこが良いかって聞くと、“顔でしょ”って言われた。その頃から、俺、女の子嫌いでさ。容姿しか見ない女なんて……一緒にいたくもないって……。』
「………」
あんなに、優しい笑顔を持ってる人なのに…そんな風に思ってるなんて……
『ケーキもさ、そんなに上手く出来なかった時も、俺にお気に入りになりたいからって、美味しい美味しいって…嘘ばっかり。誰がどう思っても一味足りない、微妙なケーキなのに…さ。だからパティシエもやめようと思った時がある。』
「え…?」
『俺に会いたいってだけで、店に来んの。仕事仲間全員に迷惑かけた。だから、自分から辞めた。そしたらさ、たまたま俺のケーキ食べた人が、俺のところに訪ねて来て…専属パティシエやんないかって。それが今の店長だった。』
そう、なんだ…。
沙英さんが…いくとさんを…。
『最初は、俺目当ての客であふれてた。けど、店長がすべて今の平凡な生活にしてくれたんだ。だから、俺はまた笑っていられる。』
「……大変、だったんですね…。」
苦しんでるのは私だけじゃないって、思った。