Only One



『ケーキのスポンジがさ、いっつも硬くて、ちょっと工夫したんだ。そしたら、君…“先週のショートケーキ、ふっくらしてました。いつも、なんか硬いなって思ってたんですけど”って。』

「ごっ、ごめんなさいっ…!」


ゎ、私ってば、知り合う前からいくとさんに失礼なことを…ッ


『いいのいいの。本当のことだったし。…それで、1週間に1度しか来ないのに、変化が分かるんだって…、感心した。嬉しかったんだ。』

「……///」


へ、変化が分かったのは、毎週楽しみにしてて、味わって食べてるからで…。

そう言えば、そんなことがあってから、私はあのケーキ屋さんだけに行くようになったんだっけ…。

あのふっくらした感じが、私のドストライクだったから…///

あの美味しいケーキ作ってたの、いくとさんだったんだぁ…。


『初めて会った時も、びっくりだったよ。俺を見た瞬間、帰っちゃうんだから。ケーキの変化を気付いてくれてた子だったから余計に…凹んで。』

「ごっ、ごめんなさっ……!」


さ、最悪だぁ…。

そんなに落ち込ませていたなんて……。


『でも、その理由を聞いて納得した。よっぽど怖かったんだろうなって…。』

「う……」


何も言えない私に、苦笑いのいくとさん。

こんなに男の人と話すのが苦にならないなんて、初めて――…。




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