Only One
『…もう元気出た?』
「えっ……」
笑顔で私を見つめるいくとさんに私は驚く。
もしかして、私を慰めるために自分の過去を――…?
『もう遅いよ、送ってく。』
「え……」
いくとさんの気遣いに泣きたくなる。
こんな私を気にかけてくれるなんて…、
そう思う一方、不安にもなる私。
いくとさんと言えど、男の人だという認識がある以上、恐怖は付き物。
完全に安心して隣にはいられない。
つい数分前だって、怖い思いしたんだし――…。
「――じゃぁ、駅まで…お願いします。」
『いいの?ここから凄く近いけど――』
「だっ、大丈夫です!大丈夫ですから…ホントに…。」
『……そっか。』
嫌な思い、させちゃった……。
ぎこちなく笑って歩き出したいくとさんの後ろを追う。
そのままぎこちない空気は流れ、別れた私達だった…。