規則の守護者
危険。

銃。

落ち着いた口調に似合わず、発された単語はひどく物騒だった。


不意に、里中を不安が襲う。

唐突に、自分の持っている物が、ただの鉄の塊ではなく危険な武器だと気付いたのだ。

気付いてしまえば、不安は焦りにしかならない。


「ねえ、君」

「動くな」


男が振り返ろうとするので、里中は慌ててその背へ銃口を押しつける。


「……動くな」


それは実質、命令ではなく哀願だった。

語気だけは強いものの、銃を握る手の汗が尋常でない。

気を抜けば、滑り落としてしまいそうなほどだ。


そんな里中を知ってか知らずか、男は穏やかに話し掛けてくる。


「僕は茜義史。
研究施設に勤めているんだ。

その銃、僕に渡してくれないかな。

地面に置いてくれればいい」



里中は動かない。

辺りはしんとしているのに、動悸の音がひどく耳障りだった。

汗が冷たい。



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