規則の守護者
瑞緒はもう、彼が血まみれになるのは嫌だった。

彼以外の者が犠牲になるのも嫌だった。

だから。


「全員、解雇して下さい。

その分、私が働きます」


だが、所長はあからさまに嫌そうな顔をする。

眉間にしわが寄っていた。


「人手、足りないんでしょ。

君だけに任せるわけにはいかないよ」

「それでも」


瑞緒は食い下がる。


「私は、1人でなければ働けません」


瑞緒は怖かったのだ。


規則を遵守したせいで、誰かが傷付くのが怖かった。

茜も美作達も、違反の犠牲にしたくない。


所長は短く、息を吐く。


「……やっぱり、彼を君の部下にしたのは間違いだったかな」



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