規則の守護者
冬が近付いていた。

少しずつ、寒くなっていく。
冷たくなっていく。


体には疲労がたまり、だんだん言うことを聞かなくなってきていた。


『違反はなくならない』


時々、瑞緒の頭にそんな言葉が浮かぶ。

浮かぶたび、彼女は目をつぶった。

苛立ちや焦りが落ち着くのを待って、目を開ける。


『私は外に、出ないから。
そしたらお姉さんは、泣かないよね』

『撃つつもりじゃなかったんだ。
銃なんて、持たなければよかった』

『私の意志よ。
約束より、ずっと確かだわ』


規則は、平凡な日常を守る。

誰かが泣かない日常。
血を流さない日常。
綺麗な青空のある日常。


「あなたにだって、あるでしょう。

自分の『青空』。
守りたいと思える、ささやかな幸せが」


だったら大丈夫、規則くらい簡単に守れるはずだ。

瑞緒は、そう思った。



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