規則の守護者
妹を撃たれた男は、ため息をついた。


「お前、俺の妹を知らないよな。

撃たれたあいつの優しさも、痛みも」


男は、そう吐き捨てて瑞緒を睨んだ。

冷たく澄んだ空気が、両者の間にある。

拳を握り締め、今度は少し語気を落ち着けて、彼は続ける。


「俺も、お前のことを何も知らない。

妹を撃ったということ以外は。


……だから。

俺は、お前を知りたい。


お前が何を考え、何を大切に思い、

……何をその銃へ込めたのか」


瑞緒は、男を見た。

聞いてくれるだろうか。

茜のことを。

規則違反の犠牲者のことを。



瑞緒は、かすかに微笑んだ。



< 130 / 139 >

この作品をシェア

pagetop