規則の守護者
「……どうしたの」


少女がつぶやく声が聞こえた。

金網から手を離し、瑞緒の方へ歩いてくる。


「お姉さん、泣いてるの?

なんで?
私が出ようとしたから?」


瑞緒には分からなかった。

自分は泣いているのだろうか。


ただ虚しかったことは確かだった。

瑞緒が絶対と考えていた規則は、少女にとっては絶対ではなかった。


それでも、瑞緒の意志など関係なく、規則は絶対。

瑞緒は少女を、力ずくでも止めなくてはならない。


銃が冷たく、瑞緒を冷やす。


少女は瑞緒へ近寄ると、その背へ手を沿えた。


「ごめんねお姉さん、もう出ないから。

だから、元気出して」



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