Train Love [完]
「は―い、息を吸って吐いてぇ」
「ひ―ひ―ふ―ひ―ひ―ふ―」


アシスタントっていうことで、隣の看護師さんとおんなじことをしていた


「はい、でましたよぉ。元気な男の子ですよぉ」


院長先生がなれた手つきでどんどん進んでいく


「可愛い」


あたしはそ―言いながら、涙を流していた


「おめでとうございます」


涙を流し続けるのはよくないことで、あたしはすぐに涙を拭き笑顔を作った


「ありがと...ございます」


お母さんは涙を流しながらあたしたちに頭を下げた


「人ってすごいですね」
「どうしたんだい?」


いきなり話し始めたあたしを見て、院長先生は驚いていた


「人は、あぁやって生まれてきて育って、死んでくんですね」
「死ぬところはここじゃないけどね」
「そうですね、でもあたしの母はここで死にました」


あたしの言葉に院長先生の目が大きくなった


「あなたもしかして、小宮山さんちの莉子ちゃん?」
「...?はい」


院長先生があたしを見て微笑んだ


その微笑みがよくわからなくてあたしは首をかしげていた


「そう、あの時の莉子ちゃんだったのね。あの時はごめんなさいね、お母さんを死なせてしまって」
「...いぇ」


院長先生は一度頭を下げてまた戻った


「あたし、先生を責めるために助産師になったわけじゃないんです。母が死んだ時、あ~どうしてあたしは付き添わなかったんだろうって思ったんです。人が生まれるところを教えてくれるのは母しかいませんから、だからどうやって生まれてくるのか知りたかったんです。」


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