空の君へ〜命をみつめた真実のラブストーリー〜
近くのカフェに着いて、お姉さんはアイスコーヒー、あたしはレモンティーを頼んだ。
震える手……。
お姉さんの表情は真剣そのもの。
「陽に口止めされてたんだけどね」
「……あ……よ、陽は……」
「早期発見で、抗癌剤治療を受ければ助かる見込みがあったんだけどね……」
“あったんだけど”……ということは
答えを聞かなくてもわかった。
陽は抗癌剤治療を受けていない……。
「もちろん、私たちは勧めたの。でも、陽は自分の体がつらいのに『絢を手放してやらないと……俺に縛りつけてちゃいけない……』って言ったの。私自身、それが陽にとって一番つらいことだってわかっていたわ」
お姉さんの言葉が胸に突き刺さる。
あのとき、あたしは気づいてあげられなかった。
痩せていた陽の姿を知っていたのに
「絢ちゃんが悪いわけじゃない。陽は大切な人が傷つくのがイヤなのよ。だから絢ちゃんに言えなかったんだと思うわ」
頭がクラクラしてくる。
あたしは陽になにをしてあげられる?
「絢ちゃんにお願いがあるの」
「なんですか……?」
「陽のそばにいてあげてほしい。あの子にとって心の支えが絢ちゃんなの……ダメかしら?」
涙が頬を伝った。
陽があたしを突き放したのはあたしに対する陽の優しさ……。
なによりもあたたかい。
あたしはお姉さんの言葉にうなずいた。