子猫が初恋提供します。
ツンと顔をあげた子猫は、ピンとたてたちっちゃいしっぽが可愛い白い子猫だ。
マイペース夜は子猫がヒョイと塀の向こうに下りてしまうまで、その姿をじっと見ていた。
「つれねぇなぁー。あのしっぽ触りたかったのに。」
あたしに振り返って楽しそうに笑う夜に…つられるように笑顔がこぼれ、緊張もほぐれていった。
「猫好きなんだねぇ。」
ほんとに残念そうな顔をしている夜を見てクスクス笑ってしまう。
大人びた端正な顔をしているくせに、唇を尖らせて…夜、子供みたいなんだもん。
「チビ猫は特別な。だってにゃあに似てるだろ?」
「…!!」
突然降ってきた…あたしに似てるから好き…そんなふうにも取れる夜のセリフに顔が熱くなる。
「あ…あたしは猫じゃない…っ」
それでも気恥ずかしさもあって反論してしまった。
「似てるぞ、すごく。さっきのヤツなんかそっくりだ。」
「……。」
なのに、夜が真面目にそんなことを言うから、おかげでなんとリアクションしたらいいのか言葉に詰まるよ。
瞳をきょどきょどと揺らすあたしを、夜がスッ…と目を細めて見下ろした。
「…だから見つけたらぎゅうってしたくなる。」
「え…っ?」
パッと顔をあげると、子供みたいな表情はみるまに消え失せて…目を見開くあたしに…夜が妖しく笑った。
「…チビ猫行っちゃったから、にゃあにしていい…?」
「……!!」