子猫が初恋提供します。
「……」
「!」
くるりと夜が振り返る。ニヤリと笑った次の言葉は何だか想像ついてしまう。
「お礼はちゅうでいいよ」
「……」
やっぱり…。
やっぱり…なんだけど、
「ん?にゃあ?」
じっと夜を見上げたあたしは、無言のまま夜の制服のネクタイを引っ張った。
引かれて長身の夜がちびのあたしに少し近づいた。
――――グイッ!
「!?に…っ」
後は思いっきり背伸びをして伸ばした手を夜の首に巻きつける。
瞬間的に見えたのは見開いた夜の黒い瞳だった。
瞳をきつく閉じた後、ほっぺたよりもずっと柔らかな感触を唇に感じた。
あたしが夜にしたのは、ただ不器用にぶつけただけの
…“キス”
「……にゃ…あ?」
固く閉じた目を開けて真っ先に見えたのは、びっくりしてる夜の顔で。それが新鮮すぎて、きっとあたしはいつもこんな顔してるんだろうなぁ…なんて思ったら可笑しくなった。
「夜のこと…襲っちゃった」
「!!」
赤くなりつつもあたしがニコッて笑っても、夜はまだ固まってた。
何だかいつもと逆で、夜に一泡ふかせられたみたいであたしはちょっといい気分。
「だって夜が、お礼はちゅうがいいって言うから」
「!」
だからね、
――――精一杯の“お礼”をしたよ。