子猫が初恋提供します。




「……い」



「?い?」



ポカンと立ち尽くした夜がじわっと腕を上げた。なんだ?とあたしが首を傾げると夜の手はあたしに向かって伸びてきた。



――――ぎゅううううっ!!



伸びてきた手はあたしを抱き潰さん勢いで抱きしめた。



「にゃあ…っ!俺、帰りたくない!そんで今度は俺に襲わせろ!」



「ぐっ…ぐるじぃ…っ」



今まさに襲われてる気分ですが。(息が出来ない)



少し落ち着くとあたしの頭に顎を乗っけて、はぁ~…と長い溜め息をついた。



「…今、蓮さんと約束したこと後悔してます…。無事に帰したくねぇ。何かしたい」



「出来れば心の中で言ってくださいぃ~っ」



それはたいがい心の中に収めるセリフだよ…。









「はぁ……しょうがねー。帰るか」



溜め息をついた夜から改めて手が差し出される。



「うん…」



少し落ちたテンションでその手を取ると、また二人歩き出しさくら公園を後にした。



すっかり夕暮れ



小さな子供達は家へ帰ってしまったのかすれ違うことはなかった。



「にゃあ、足もちっちゃい」



「夜はおっきいね」



踏み出した足を比べてその違いに二人で笑う。



夜とあたしじゃあ足の長さが違うから、歩くスピードも違うけど、夜はあたしに合わせて歩いてくれる。



だから



…いつもよりずっとゆっくりと歩いたことは、夜には、ナイショ。








まだまだうちが見えなくていいとこっそり思いながら帰る家路。



記念すべき初デートは、



ドキドキして
ヤキモチをやいて
帰りは何だか切なくて


…また夜を好きになった。








手を繋げる今はどうか時よ止まれ



手を離した瞬間に、あたしは早く明日になれと願うはず







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