子猫が初恋提供します。
「しっ、篠崎ぃ!藤間が!あの藤間が!さっきから黙々とアップしてんだよォッ!?いっつも出番まで寝てる男がだよォっ!?」
「あ、どうも新堂先輩。怪我の具合どうです?それは俺も驚き過ぎてるとこなんでー」
「何!?何!?何!?今日隕石とか落ちるの!?」
「いやぁー…ちょっと事情がですね…」
体育館に着くと俺はさっさと着替えをすませて、言いたい放題言ってる奴らをほっといて、今までろくにする事のなかった試合前のアップを念入りにした。
頭冷やしとかねぇとうまく動けねぇし。
体育館はすでに満員御礼。みんな暇人。
「あち…」
落ちる汗に堪らず呟いて腕につけたリストバンドで顔を拭う。
「先輩っ!「藤間くんっ!!「これ使ってくださぁい!!!」」」
頭を濡れた犬みたいに振って汗を飛ばしてたら、わらわらと女子が集まってきて一斉にタオルが差し出された。
「別にいー」
全部いっぺんにお断りして、かいた額の汗を与えられた3番のユニフォームを持ち上げて雑に拭きながら俺はにゃあの姿を探す。
「!」
すぐに見つかる小さな姿。
出口に近い隅っこの方で、胸の前で両手を組み合わせたお祈りみたいなポーズで、赤い顔してこっちを見てた。
…あんなうるうる目されて見つめられるとヤバいんですけど。
(可愛い)
アップであったまった身体がまた熱を持った。
とろけるみたいに瞳を潤ませて、頬を赤く上気させて、そのくせちょっと心配そうに眉を下げて……俺を見てあんな顔してるのかと思うと、ゾクゾクする。