子猫が初恋提供します。
目をまんまるにして口をパクパク。もう声すら出てこない。
この衆人環視でちゅうなんてことにはならなくなったけど、その後にそんな罠……!
断らなくちゃ!何がなんでも断らなくちゃ!!
デンジャラス過ぎる!
「よっ……!?」
夜って言いかけて、思わず口ごもった。
だって夜…
「絶対に勝つつもりだったけど、さらにやる気出たー。早く試合終わんねーかな」
なんて上機嫌なんですか!!?あなた!!!
しかももう試合後のこと言ってるよ……!(まだ始まってもないのにっ)
「にゃあ」
「っ!?」
ご機嫌すぎる夜がにっこにこであたしの手を取った。大きな両手でぎゅっと手を包まれる。
ーーーーグイッ!
「ふっ…わぁ!?」
そのまま引っ張られて、あたしは勢いのままに夜の腕の中にすっぽり収まってしまった。
周りからは悲鳴に近い声がしてるみたいだけど、頭の中は真っ白でリアクションすらままならない。
ただ固まって夜を見上げていたら、そっと握られてた手がほどけ…あったかい手があたしの頬に触れた。
両手であたしの頬を包み込んだ夜がちょっと首を傾げる様な仕草をして優しく笑う。
夜に顔を固定されている状態のあたしは恥ずかしさに顔をそむけることも出来なくて…ただドキドキと夜を見上げてた。
そのまま夜の綺麗な顔がゆっくりあたしの顔に近づいて、あたしは身体をこわばらせる。
夜はあたしに囁いた。
「本気でがんばるから、そのまま俺だけ見てて」
「……は、ぃ。……っ!」
ドキドキし過ぎて思わずすんなり返事を返しちゃったあたしの左の頬に柔らかな感触を残して、夜は自分のチームのベンチに戻って行った。
顔を真っ赤にして夜の唇の感触を残したままのほっぺたに手を当てて呆然とするあたしは、石になったままコートに戻っていく夜を見送る事もできなかった。
実はその時、あたしが背中を向けていたコートでは…
あたしのほっぺたにキスを落とした夜が、ポカンと見てる相手チームの人に向かって
あたし越しにーーーーべえっと舌を出していた事を、あたしは知りません……。
「……!あぁっ!!断ってない!!」