子猫が初恋提供します。
「おー、また加点」
篠崎先輩の視線の先で夜がまたシュートを決めた。キャー!!っと上がる歓声は耳に痛いくらい。
「あいつの本気とか何年ぶりに見たかな」
コートから視線を外さずに、篠崎先輩はそうつぶやくように言った。
夜の幼なじみだという篠崎先輩。あたしは夜がめんどくさがりなのは知っているけど、それがどれだけとか出逢う前のことはわからない。
付き合う前に、蓮から聞いた夜の噂を思い出す。
ーーーなんでも出来るのに何にも興味を持たないやる気のない人
生き生きとコートの中でプレイする夜を見ていると信じられないよ。
「…ここまで本気か」
「?」
呟く篠崎先輩の言葉の意味がいまいちわからなくてきょとんと首を傾げる。
あたしのそんな様子を見た篠崎先輩が苦笑を浮かべた。
そして器用に片目をぱちりと閉じて今度は意味深な笑みをあたしに向ける。
「間違いなくこの試合、夜の一人勝ちだよ」
確信めいた自身たっぷりの言い方に驚いて、あたしは目を丸くしてしまった。
それを横で聞いていた蓮がフンッと鼻を鳴らす。
「一人勝ちなんて現実的じゃないわね。咲学ってアレでもバスケの名門なんでしょ?今までだって勝ったことないんでしょう?藤間夜兎一人が頑張ったとこで厳しいんじゃない」
ありえないでしょ?と蓮の言う事はもっともで…
「まぁ、普通ならそうかもねぇ。ーーーでも、夜だし?」
だけど篠崎先輩はわかってないねと言わんばかりにくすりと笑った。