子猫が初恋提供します。
ちょっと!ちょっと!本当に蓮らしくないよ!?
メラメラと怒りの炎を背に立ち上らせながら篠崎先輩を睨みつける蓮はいつもの冷静沈着さを完全に脱ぎ捨てていた。
これは何とかなだめなきゃやばいと感じ、あたしはおずおずと蓮に声をかけた。
「れ、蓮!落ち着いて……」
「いいわよ、やる」
「蓮っ!?」
蓮はあたしを遮って篠崎先輩にきっぱりと言った。それは潔くて蓮らしかったけど、そもそも挑発に乗っちゃうとか蓮らしくないことをする蓮にあたしは戸惑っちゃって名前を呼ぶだけで精一杯になってしまった。
その時の篠崎先輩の満足そうな顔といったら……
「そうこなくっちゃねぇ…」
「!?」
ほんの一瞬だけタレ目の奥がギラリと光った気がして、あたしなんて思わずのけぞったほどだ。
蓮はと言えば、怯むどころか怒りに猫目を燃やしてビシッ!と篠崎先輩に人差し指を突きつけた。
「そのかわり、そっちが負けたら二度とあたしにそのチャラい顔を見せるな!!」
「!……嫌われちゃったものだなぁ。いいよ。了解」
蓮の剣幕に少しだけ目を見はった先輩は少し苦笑して頬をかいたけど、すぐににっこり頷いた。
睨みつける蓮と笑顔の先輩。
コートの中の夜とひたすら困惑のあたし。
それぞれ色んな思惑を乗せて、夜の試合は佳境に入る。