子猫が初恋提供します。
響きわたる長く高い笛の音に、咲学チームが呆然とその場にへたりこんだ。信じられないって顔をして言葉も出ないみたい。
反対に夜が助っ人に入った楓華チームは怪我で試合に参加出来なかった先輩を筆頭に喜びを大爆発させてる。
「藤間あぁぁ〜〜〜!!ありがとう!ありがとう〜〜!!長年の雪辱をついに……!!」
「あー新堂先輩、それ先輩にやられても俺嬉しくない。ごつくて痛い。にゃあがいい」
ギプス先輩は男泣きで夜に抱きついてて、それに夜がうっとおしそうに嫌な顔してるのが可笑しかった。
夜はしがみつく先輩をぐいっと引っペがすと、不意に真面目な顔をして真っ直ぐに向き直った。
「藤間?」
きょとんと先輩が真顔になった夜に首を傾げる。あたしもどうしたんだろうと夜を黙って見つめた。
「今日、俺、初めてちゃんと本気でやった」
「?おぉ、おかげで勝てたぞ!ありが…」
「だから礼はいい」
「へっ!?」
先輩のお礼の言葉を遮るようにして夜は眉間に皺を作った。
それから肩を落としながら帰って行く咲学バスケ部に視線を向けた。
「夜…?」
いつにない夜の様子に篠崎先輩すら困惑気味の様子だ。
夜はちょっと目を伏せながらその思いを口にした。
「俺、今まであいつらと変わらなかったなと思う。頼まれただけでやる気なくて、マジに勝ちたいとか別に考えてなかった。やる気なくても勝てちゃうし。……でも、今日、あいつら見ててそれがすげー恥ずかしいと思った」
それから夜はあたしに視線を移して、ちょっとはにかむように笑った。
それがなんだか子供みたいに素直な笑顔で、あたしの胸はきゅうっと締めつけられた。
「バスケ部のプライドも俺の譲れないモノもマジにやらなきゃ失礼なもんだなって。……気づけてよかった。ありがと」
「!!」
夜の言葉に先輩は言葉をなくしてた。
あたしも、夜がそこまで考えるくらい譲れないモノってなんだろうって……すごく気になってしまった。