子猫が初恋提供します。
なにはともあれ、試合結果は言うまでもなく、楓華高校バスケ部の大勝利!!
それも
「さて、蓮ちゃん。デートどこに行こうか?」
「っ!どこにでも……」
蓮を見て篠崎先輩がニヤニヤ笑って、蓮は悔しさに拳を震わせながら低く唸るように答えた。
そう、相手チームまさかの無得点。
ーーーー夜は完全勝利をやってのけた。
つまり篠崎先輩は蓮とのデートを勝ち取ったわけで……
勝利の立役者である夜はーーーー
「にゃーあ」
「!」
背後からしたその甘い声にビクッとしておずおず振り返る。まだ汗を滲ませたユニフォーム姿の夜が、それはそれはいい笑顔であたしを見てる。
「俺、いっぱい頑張ったんだけど」
「う、うん。すごかったっ」
コクコク素直に頷くと、パッと夜の表情が更に嬉しそうに輝く。
ああぁっ、眩しいっ。
「じゃあ俺エライ…?」
「う、うん!うん!」
きゅーんと鳴く子犬みたいな夜の上目遣いは破壊力抜群です。
あたしは更に力強くコクコク頷く。
…この時あたしは、夜のキュン攻撃に大切な事が頭から吹っ飛んでいたのです……。
「ごほうびは日曜日俺ん家に来てからな?」
「うん!…………うん!?」
その瞬間、夜はにやりとしてやったりな悪い笑顔を浮かべた。
あざとい夜は自分の利益をけして忘れはしないのだ。
ごほうびの存在をようやく思い出したあたしが赤くなったり青くなったりして慌ててると、夜がフッと笑ってぽつりと呟いた。
「……俺の本気は、にゃあが持ってんのかな…」
「へ…?」
「あ〜、もう疲れた。腹減った。嵐のおごりでマック行こ」
「あっ!?待ってよ!夜ー!?」
夜の呟きは小さくてうまく聞こえなかった。
急にスタスタ帰りだしてしまった夜を追いかけながら、いつも飄々と余裕綽々な夜の背中が、ちょっと照れてるみたいに見えて……あたしは何だか嬉しかった。