子猫が初恋提供します。





あたしと夜がバタバタと体育館を後にしたその後ーーー




一人の男子生徒が体育館に向かっていた。



「すいません、バスケ部の試合ってもう終わったんすか?」


「あっ!さ、さっき終わったとこで〜…」


「あー…、どうも。間に合わなかったか」



がっしりした恵まれた体躯に纏うのはグレーのブレザー。これは咲学の制服だ。バスケ部らしい長身にツンツンさせた金髪、色素の薄い大きめのつり目がやんちゃ坊主なイメージを彼につけた。その右手には痛々しく包帯が巻かれていた。

彼はそれだけ聞くとすぐさまくるりと背を向け玄関に向かってまた歩き出す。



「キャー!ちょっと!今のかっこよくない!?」

「………」



騒ぐ女の子達に少し気をよくしたのか振り返ってひらひら手を振って愛想笑い。キャーとはしゃぐ女の子達にまた背を向けると浮かべたのは皮肉げな笑み。





「ちょっと、調子に乗ってくっつかないでよ」


「えー?蓮ちゃん自意識過剰じゃない?」


「なんですって!?」



玄関では篠崎先輩に捕まった蓮が先輩に噛みついてる真っ最中で……


そこで、さっきの咲学生が玄関にたどり着く。


彼は蓮を見て目を瞠った。







「中村……?」


「え…………?ーーーぁ、荒木(あらき)……?」


「おまえなんで楓華にーーーーなら、もしかして、橘も………」


「!あんた……!まさかまだ、にあをーーー」


「居場所わかったんならいいや。中村、橘に言っといてくれよ。……今度、逢いに行くって」


「ちょっと!?待ちなさいよ!!ーーー荒木 軍将(あらきぐんしょう)……!!ーーーアイツ、帰って来てたの……!?」



校舎から出ていく背中を蓮は動揺を隠せない様子で見送った。



「蓮ちゃん、今のって……」


「っ、にあには……まだ言わないで。お願い……っ」


「……」







…のんきなあたしは、まだ、何も知らない。



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