子猫が初恋提供します。
夜が戻って来る前にパッとあたしから離れた篠崎先輩は、何だかずっと上の空な蓮を引っ張ってにーっこり笑いながら先に帰ってしまった。
残されたあたしはどうも様子のおかしい蓮を心配に思いつつ、篠崎先輩に仕掛けられてしまったあのごほうびの内容を思い出して一人沸騰しそうになっちゃってた。
それに、夜があたしのために頑張ってくれたって知ってしまったら………喜ばずにいられなくて。だって夜、あたしのために怒ってくれてたんだよね?
怒るとかめんどくさいなんて言っちゃうくらいめんどくさがりの夜が。
「~~~っ」
かぁっと身体が熱くなって、胸の奥がむずむずしてしまう。あたしはそれをごまかすように冷たいジュースをぐいと勢いよく飲んだ。
喉を滑り落ちるひんやりした感触はお腹に落ちるとあたしの熱でたちまち熱くなってしまったように感じてますます落ち着かない。
夜、あの時、日曜日に………俺ん家にって……言ってたよね……?
それって、夜の家にお呼ばれってことだよね?
あれ?…もしかしてあたし、日曜日、夜の家に行くの!?
そんな重大なことに今気がつきました!!
どうすりゃいいんだと固まっていたら、不意打ちに右のほっぺにツンと指があたる。
「にゃあ、なに百面相してんの」
「わぁ!?」
戻って来た夜が可笑しそうににんと口の端を上げて、あたしのほっぺをつついてた。
それからきょろっと辺りを見回す。
「あれ?嵐と蓮さんはー?」
「あっ、先に帰るって…」
「へー」
それだけの気のない返事をしながらイスを引いてあたしの向かいの席に座る。
向かい合って目が合うと夜はにこっと笑った。
さっきまで色々考えてたこともあって、可愛い笑顔一つでドキッと跳ねるチョロいあたしの心臓…。
夜、別にその話ししないし、あたしの聞き間違いかもしれないしね!挙動不審になっちゃうし変に考えるのやめよ。
少しだけ気持ちが落ち着いたところで夜が立ち上がった。
「じゃあ俺らも帰ろ」
「う、うん」
慌てて席を立つと夜がすかさずトレーを持ってくれる。
「ありが…ーーー!?」
お礼を言おうとして、夜の顔を見上げたあたしはーーーー固まった。
毎度お馴染み、あの笑顔。
ニィと口の端を持ち上げたあの不敵で悪い顔!
「日曜日、俺がにゃあの家に迎えに行くな」
「!?」