子猫が初恋提供します。
「わぁ……!」
初めて来た夜のお家は、おっきくてキレイなまだ新しいお家だった。
驚いたのはその同じ敷地内に隣接されたアニマルクリニックがあって、聞けば夜のパパは獣医さんなんだとか!
うちのパパもお医者さんだから、意外な共通点だ。
そしてそのままリビングに促される。
「んー?誰もいねぇ?」
夜はきょろきょろと家の中を見回していたけど、人の気配は無しだった。
「向こう(病院)かなー?ちょっと行ってみてくる。にゃあ、ちょっと待っててな?」
「う、うんっ」
あたしはリビングのソファにちょこんと座って、頭を撫でてくれる夜に向かってドキドキ緊張しながら頷いた。
夜はそんなあたしを見てフ…と笑った。
「うちににゃあがいるとか夢みたい。緊張すんな。俺の親がにゃあ気に入らないわけない」
「ひゃっ!!」
嬉しそうにあたしを見つめて、待っててと頬にキスすると部屋を出て行った。
あたしはキスされたほっぺを押さえながら、相変わらずサラリとそんなことを言う夜にさっきとは違うドキドキで顔を赤くした。
夜を待ってるあたしは緊張で落ち着かなくて、ソファに座ったままきょろきょろと辺りを見回す。
ホテルの部屋みたいに並んだ大きなソファに壁に埋め込まれた大型テレビ。広くてオシャレなリビングだ。
ふと窓に目をやるとお庭が見えて、綺麗に整えられた庭には色とりどりの花が植えられていてとっても綺麗だった。
…子供の頃は夜もあのお庭でお姉さんと一緒に遊んだりしたのかな?
やっぱり今みたいなマイペースな子で、子供の頃からあんなに綺麗だったのかな?
ここが夜のお家なんだなぁ…。
色んな事に思いを馳せてじぃんと胸を温かくしながら、思わず顔の前で手を組み合わせて感動を噛み締めた。
その時、扉の向こうでガチャリとドアノブに手をかける音がした。
夜が戻って来たの?
そうじゃなかったら、お家の人…。
ゆっくり部屋のドアノブが回り、あたしはまたまた緊張に身体を強張らせて、徐々に開いていく扉に視線を釘付けにした。
「あらぁ…?」
「!?」
のんびりした声と共に現れたのは、お人形さんみたいなすっごい美人だった!!
美人さんは固まるあたしをじっと見つめると
「わぁ…、可愛い子猫ちゃん」
「!?」
薔薇の花が朝露に綻んだほどの麗しい笑みを浮かべた。
ど、どうしたらいいんでしょうか…?
(こ、子猫ちゃん!?)